[東京/香港 1日 ロイター] - 日本企業による外貨建て社債の発行が急増している。大型のM&A(合併・買収)などに伴う資金需要の高まりを海外投資家の旺盛な需要が支える構図で、年初からの発行額は過去最高のペースで推移している。資金調達多様化の視点からも、こうした流れは今後も継続すると予想されている。
調査会社ディールロジックによると、日本企業による米ドル建ての社債発行は今年、5月末時点で前年同期のほぼ3倍となる350億ドル(約3兆8000億円)に達し、通年で過去最高だった昨年全体の発行額413億ドルに迫る勢い。ユーロ建てもドル換算で88億ドルと5月末時点での過去最高を更新、前年同期の48億ドルから大幅に増加した。円建ては前年同期とほぼ同水準の344億ドルだった。
外債発行の伸びの背景の一つは大型M&Aが相次いでいることだ。NTTは、昨年末のNTTドコモ完全子会社化の資金として金融機関から借り入れたブリッジローンの一部借り換えなどのため、2.1兆円の社債を発行。このうち円建てで1兆円、今年に入って残りをドルとユーロ建てで調達した。セブン&アイ・ホールディングスは、米国のガソリンスタンド併設型コンビニ「スピードウェイ」買収資金に充当するため、総額109億ドル超のドル建て社債を発行している。
世界的な低金利による運用難を背景とした海外投資家の旺盛な社債需要も追い風になっている。「グローバルな金融緩和の中、海外でも一定のイールド(利回り)を確保できる社債への認識が高まり、相対的に海外で社債を発行する条件が良くなっている」(野村資本市場研究所の佐藤淳主任研究員)という。
<海外投資家の強い需要>
投資銀行の起債担当者の多くは、外債による資金調達は中長期的なトレンドとして今後も継続すると見込む。
日本企業の資金調達はこれまで銀行借り入れなど間接金融が主流だったが、特定の金融機関に依存するリスクが意識され、国内外の社債市場に目を向ける企業が徐々に増えている。バンク・オブ・アメリカ資本市場部門のマネージングディレクター、倉岡亨氏は、足元の外債発行の増加について、「銀行借り入れから資本市場での直接調達に移行しつつある中で、日本企業が調達手段を多様化しようとして国内外の債券市場にアクセスしている」と分析する。
海外の社債市場は国内と比べて規模が大きく、一度に大きな額を調達しやすいのもメリットだ。同マネージングディレクターの坪内亜紀子氏は「昨年3月から4月にかけて、コロナ禍で国内の債券市場が不安定な状況となった際も、海外市場では流動性が確保されていた」と指摘。「海外に投資家基盤を持つ重要性が改めて認識された」と話す。
海外投資家にとっても格付けの高い日本企業の社債は魅力的だ。バークレイズ証券債券資本市場部の丸山達也部長は「日本企業の社債は、日本のGDPの規模や大企業の数を考慮すると、(海外市場では)十分に供給されてこなかった」という。外債発行が増えている現状でも、債券市場の需給に影響するような供給量はなく、「日本の社債に対する投資家の需要は強い」とみる。
SMBC日興証券第二デット・キャピタル・マーケット部の木下裕之部長は、過去に外債発行の経験がない企業も含めて外債の相談が多く寄せられているといい、「外債発行のポテンシャルがある企業の数はまだ増えていく」との認識を示している。
(山崎牧子 Scott Murdoch 取材協力:新田裕貴 編集:石田仁志)
アングル:日本企業の外貨建て社債発行急増、M&Aなど背景 - ロイター (Reuters Japan)
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