教科書会社「大日本図書」の元取締役が大阪府藤井寺市立中の教科書選定を巡る贈収賄事件で罰金刑を受けたとして、文部科学省が、新たな中学教科書の発行を認めない罰則を同社に科す方針を固めたことが9日、関係者への取材で分かった。この罰則適用は初めてで、次回2023年度の中学教科書検定で申請しても不合格となる。現在使用中のものに影響はない。

文科省の教科用図書検定規則では、発行者が教科書検定をゆがめるような「不公正な行為」をした場合、検定に申請した教科書を不合格にすると規定。文科省は大日本図書社員らが中学校の教科書採択を巡り、不適切な接待を繰り返したことを重く見て、厳格な処分が必要だと判断した。

罰則の対象教科は、事件に絡む理科、数学、保健体育の3教科となる見通し。中学教科書の次回検定で合格すれば25年度から各学校で使用される。大日本図書が新しい教科書を申請した場合は、内容にかかわらず自動的に不合格となる。

教科書無償措置法には罰則の適用要件に贈賄罪での罰金刑があり、発行者の指定取り消しもできるが、適用例はない。全ての教科書が一切発行できなくなるため、使用中の教科書も採択をやり直す事態となり、文科省は学校現場への影響が大きすぎると判断し、指定取り消しを見送ったとみられる。

23年度に使用される大日本図書の中学校教科書のシェアは、理科26・8%(約88万冊)で3位、数学5・2%(約17万冊)などとなっている。

事件では、加重収賄罪などに問われた藤井寺市立中の元校長が大阪地裁で有罪判決を受け、大日本図書の元取締役と社員が贈賄罪で罰金の略式命令を受けた。また東日本支社長が茨城県五霞町の教育長らと会食し、大日本図書側が費用を全額負担していたことが昨年9月に発覚した。(共同)