日本で、既存事業の脱炭素化に向けた資金を調達するトランジションボンド(移行債)の発行が相次ぐ。民間企業の2022年発行額は前年から17倍以上に増え、日本政府も世界初となる移行国債の発行を始める。米国を中心に「反ESG(環境・社会・企業統治)」の動きも出始める中、日本だけの潮流にとどめず、脱炭素社会に向けた現実解として海外にも広げられるかが問われる。
岸田文雄首相(左から2人目)は世界初となる政府による移行国債の発行を決めた(写真=共同通信)
脱炭素に向けた資金と言えば、数年前までは風力発電や太陽光発電といった再生可能エネルギーなど、一見してグリーンな事業に投じられる傾向が強かった。
これに対し、移行債は二酸化炭素(CO2)を大量に排出する鉄鋼や化学、エネルギー企業などが発行。再生エネだけでなく、既存事業の中長期的な脱炭素化に向けた技術開発や設備投資などにも資金が充てられる。
22年2月のロシアによるウクライナ侵攻以前は欧州を中心として、世界は脱炭素社会に向けて勢いよく進んでいた。だがウクライナ侵攻以後は、ロシアが輸出していた天然ガスや石油といった化石燃料の供給が滞って多くの国がエネルギー問題に直面。米国では反ESGの流れが強まる傾向もある。こうした中、注目が集まっているのが移行債だ。
移行債の発行に積極的なのが実は日本だ。日本政府は22年、世界で初めて移行国債の構想を打ち出しており、23年度から「クライメート・トランジション・ボンド」という移行国債を発行。10年間で20兆円の資金を調達する。
岸田文雄首相は23年6月のGX実行会議で、海外の主要国に遅れる日本の脱炭素化を念頭に「世界に遜色のない中身と水準で支援を検討する」と発言した。一定期間をかけて段階的にCO2排出量の削減を進める考えで、自動車や電力といった業種ごとにトランジションファイナンス(移行金融)のロードマップも作成した。
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脱炭素への移行債、日本が世界トップ 発行額は前年比17倍超に - 日経ビジネスオンライン
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