自然災害の発生リスクなどを引き受けるCAT債(大災害債券)の市場は、今年最もパフォーマンスの良い債券区分の一つだ。主要発行体の 世界銀行が発行拡大の準備を進める中で、販売額も大幅に増えようとしている。
世界銀行は今後5年間で、いわゆるCAT債の発行残高を現在の10億ドル(約1500億円)から50億ドルに増やす計画だ。総額約400億ドル規模の市場に対して大幅な増額となる。
「野心的だが、現実的だ」。世界銀行の財務部門でマーケットソリューションズ・ストラクチャードファイナンスの責任者を務める マイケル・ベネット氏はこう語った。
CAT債のリターンは事実上、他の全ての債券市場に勝っており、その人気は高まっている。今年、米国債の投資家が損失を被っている間に約17%上昇した。
CAT債は保険市場のリスクを引き受けた対価として、買い手に利益をもたらす商品だ。そうしたリスクは、異常気象の増加に伴い増大している。
途上国に資金援助を行う世界銀行は、CAT債がカバーする自然災害の範囲を拡大する計画だ。
「ハリケーンやパンデミック(世界的大流行)、地震だけでなく、洪水や干ばつなどの災害もCAT債の対象になるだろう」とベネット氏はインタビューで話した。
欧州保険年金監督機構(EIOPA)のペトラ・ヒールケマ議長によれば、世界で最も裕福な地域でも、今後の潜在的な損失に対処する上で、「保険のカバーが足りていない」ところがあるという。
こうした状況について、「われわれの大陸を襲う自然災害はかつてないほど頻度が増え被害も増大しているため、重大なことだ」と同氏は最近、欧州議会の経済金融委員会で話した。
世界の多くの地域でサイクロンや干ばつ、洪水などの災害への備えは、ほとんど、または全くなされていない。スイス再保険研究所の自然災害レジリエンス指数によれば、2022年時点で世界のリスクの約75%が 補償されていないという。
CAT債の投資家は、契約で定義された災害が発生し、ハリケーンでの気圧の値など特定の条件が満たされると被保険者に支払いを行う。全ての条件が満たされると、投資家は資金の一部または全額を失うことになり、その資金は対象となる自然災害関連費用を賄うために使われる。
CAT債の投資家は歴史的にほとんどの場合、そうした支払いを回避してきた。だが世界銀行が過去10年間に発行した約30件のCAT債のうち約6件については、発行体が備えようとした損害の一部ないし全部について、投資家はカバーを求められた。
鍵は十分なプレミアム
11月末からドバイで開催される国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)では、増加する証券化モデルについて議論が行われる予定だ。CAT債はそうしたモデルに含まれる。
気候変動リスクに関連して魅力的な金融商品を開発することは、地球温暖化の影響を受けやすい国々を守るのに要する膨大な民間資金の一部を引き出す鍵となる。
英ケンブリッジ大学の持続可能性リーダーシップ研究所のフェロー、 アナ・ゴンザレスペラエス氏は「グローバルサウス(新興・途上国)を守ることによる分散のメリットは、グローバルノース(先進国)の民間資本にとって大きなインセンティブになる」とコメント。「資本を利用しやすくする鍵は、そうしたリスクを負うのに十分なプレミアムを安定的に供給することだ」と語った。
CAT債の値動きは、株式や他の債券と相関関係がないため、投資家はポートフォリオの分散を図ることができる。また最終投資家からのESG(環境・社会・企業統治)ニーズを満たす上でも有効だ。
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原題: ‘Catastrophe’ Bond Market Headed for Major Surge in Issuance (2)(抜粋)
リターン好調の大災害債券、「野心的」発行増へ-保険カバー不足で - ブルームバーグ
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