ジェーシービー・インターナショナル(以下、JCB)は3月22日、インドの大手クレジットカード会社SBIカード・アンド・ペイメント・サービス(以下、SBIカード)によるクレジットカードの発行を開始した。国内で普及が進むインド独自の決済ブランド「RuPay(ルペイ)」と連携し、国外でのカード通用性を持つ「JCB」と組み合わせた「RuPay/JCBカード」として発行する。SBIカードは、インド国内で2万2,000以上の支店を有する同国最大の国営銀行ステートバンク・オブ・インディア(SBI)の子会社で、RuPay/JCBブランドのクレジットカード連携先としては6社目となった。
JCBは2019年7月以降、「RuPay」を管理するインド決済公社(NPCI)と提携することで、NPCI傘下の金融機関などによる「RuPay/JCBカード」の発行を推進している。まずは国内総発行枚数が約9億枚と圧倒的に多いデビットカードの発行が先行していたが、2021年9月からはクレジットカードの発行も開始した。クレジットカードの国内総発行枚数は約7,000万枚とデビットカードに比べると少ないものの、JCBによると、クレジットカード1枚当たりの決済金額はデビットカードの約17倍と大きいこと(注1)や、海外における決済手段として今後も需要の伸びが期待できることから、クレジットカードの展開に重点を置いているという。
また、国内決済データの国内保管を義務化した新規則に対応していないとして、インド準備銀行(RBI)が2021年4月にアメリカン・エキスプレスとダイナースクラブに、2021年7月にはマスターカードに、相次ぎ国内でのカード新規発行停止を命じたことも、代替手段としての「RuPay/JCBカード」に注目が集まる外部要因になっているという(注2)。
新型コロナウイルス感染が拡大して以降、各国政府が外出制限(ロックダウン)などの行動規制措置をとったことがキャッシュレス決済を加速させ、クレジットカード業界に追い風となっている。元来、現金決済が主流だったインドでは、2016年11月に高額紙幣を突然廃止し、新紙幣の準備不足もあって市中では現金不足となったことから、電子決済ビジネスが大きく動き出し、さらに携帯端末の普及とともにモバイル決済が成長してきた。そこに、フィンテック技術を持つスタートアップ企業が市場参入し、ごく少額の支払いや個人間の簡易送金に対応する電子マネー決済サービスが提供され、これまで銀行口座を持っていなかった農民や口座を開設できない貧困層なども取り込んで、市場規模が拡大し続けている。インド政府も近年、キャッシュレス決済の利用促進策を発表するなど一層後押ししている。こうしたなか、クレジットカード決済は高い信用力から高額支払いや海外EC(電子商取引)などに強みがあり、今後もモバイル決済とはすみ分けながら、巨大なインドのキャッシュレス需要を取り込んでいくことが期待される。
(注1)インド準備銀行の2021年統計によると、1枚当たりのデビットカードの月平均決済金額は670ルピー(約1,072円、1ルピー=約1.6円)、クレジットカードは1万1,512ルピー。
(注2)インド準備銀行は2021年11月、ダイナースクラブに対してカードの新規発行再開を認めた一方、アメリカン・エキスプレスとマスターカードに対しては2022年3月現在も新規発行停止措置を課している。
(松永宗徳、広木拓)
JCB、インド最大国営銀行の子会社によるクレジットカード発行開始(インド、日本) | ビジネス短信 - ジェトロ(日本貿易振興機構)
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