国内企業が今年上半期(1~6月)に発行した社債の総額は約4・6兆円で、4年ぶりの低水準となった。米欧の利上げに伴い、社債の価格が下がって含み損を抱えるリスクを投資家が懸念し、購入意欲がしぼんだ。需要減を見込んで、社債発行を見送ったり発行額を減らしたりする企業が相次いだ。
社債は、企業が設備投資などの資金を調達するために発行する債券を指す。主な投資家は保険会社や銀行などで、広く一般から募る借金とも言える。SMBC日興証券によると、1~6月の発行総額は前年同期比23%減の4兆6397億円で、2018年(3・9兆円)以来の低水準となった。
大和ハウス工業は5月下旬、100億円程度を想定した20年債の発行を「需要が集まらない」と判断して見送った。ソフトバンクも6月に予定していた社債の発行を延期した。関西電力は3月、一般の債券より返済の優先順位が低く、一部は資本とみなされる「劣後債」の発行額を、当初想定の3000億円程度から2200億円に減額した。
発行見送りや減額の背景にあるのは、金利上昇だ。米欧の中央銀行は急速なインフレ(物価上昇)を抑制しようと、利上げを加速させた。世界景気の減速懸念が広がり、海外社債の利回りも上昇(価格は下落)した。今後、金利上昇が続くと外債の含み損が膨らむため、投資家は新たに国内社債を購入するリスクを取りづらくなった。
一般的に社債は、国債の利回りに信用リスクに応じた金利を上乗せする。景気後退が見込まれる局面では経営リスクが高まって上乗せ分が増える。企業は利払いの負担が増し、需要も高まりにくいことから、発行を見送りやすくなる。
格付投資情報センターの格付けでも、比較的信用度が高い「シングルA」の社債の平均利回り(残存期間が5年以上10年未満)は6月中旬に0・7%に迫り、年初から0・3ポイント近く上昇した。
足元の社債利回りの上昇は一服しつつあり、平均利回りは現在0・6%程度で推移する。7月の米消費者物価指数が市場予想を下回り、米国の利上げペースが鈍化するとの見方も広がっている。
SMBC日興の吉川毅シニアクレジットアナリストは「国内社債の需要減は落ち着きつつあるが、投資家心理は急には改善しない」としたうえで、「今後は堅調な業績が期待できる業種が選別され、徐々に需要の回復が見込まれる」と予測している。
社債発行4年ぶり低水準、1~6月総額23%減…米欧の利上げ背景に見送りや減額相次ぐ - 読売新聞オンライン
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