環境事業に資金を使うことを目的とした債券「グリーンボンド(環境債)」の2022年の国内企業の発行額が1兆9000億円を超え、前年実績を上回った。1兆円超えは3年連続となり、残り1週間の動向次第では初めて2兆円を突破する。政府も20兆円規模の国債発行を検討しており、官民が一体となって温室効果ガス(GHG)排出量を実質ゼロにする脱炭素分野への資金調達を加速する。(編集委員・松木喬)
グリーンボンドは環境問題を解決する事業に使う資金の調達手段。企業や自治体が発行し、集めた資金を省エネルギー設備への更新や再生可能エネルギー事業に充てる。
環境省の集計によると、12月5日までに22年の国内の発行総額が1兆9284億円となり、前年実績の1兆8650億円を超えた。三井不動産が7月、環境性能に優れた複合施設への投資資金として800億円を調達。ホンダは3月、電気自動車や燃料電池車などの開発目的に27億5000万ドル(3025億円、集計では1ドル=110円換算)、NTTグループも7月、次世代光通信基盤構想「IOWN」などに15億ドル(1650億円)を発行した。
22年は自治体の発行増加も総額を押し上げた。長野県が128億円、三重県が120億円、大阪府が50億円を起債し、いずれも気候変動対策に充てた。他に川崎市が100億円、仙台市と福岡市がともに50億円を発行した。
22年の発行総額は前年比3%増のペース。1・8倍に伸長した21年に比べると鈍化したようだが、経済産業省が主導するトランジションボンド(移行債)など、ほかの金融商品が増えた影響と考えられる。みずほ証券の香月康伸SDGsプライマリーアナリストは「サステナブル金融全体として非常に盛り上がった1年。環境債は減少したのではなく巡航速度であり、それ以外の債券の増加が大きい」と分析する。
日本では18年から環境債の発行が本格化した。ESG(環境・社会・企業統治)投資が潮流となって機関投資家などが購入し、脱炭素資金を供給してきた。政府は20兆円規模の「GX(グリーン・トランスフォーメーション)経済移行債」の発行を検討しており、脱炭素分野へ巨額資金が動きだす。
2兆円超えは目前、環境債の発行額が伸びている|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社 - ニュースイッチ Newswitch
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