海外発行体による円建て債の起債が相次いでいる。日本銀行の新体制が発足した4月以降、円金利が安定していることから、円建てで起債する魅力が高まっている。
17日にポーランド開発銀行(BGK)が初のサムライ債を930億円、18日に米投資ファンドのKKRが約1年ぶりとなるグローバル円債を総額615億円、それぞれ起債した。今週は19日にも英ロイズ・バンキング・グループとインドネシア共和国がサムライ債の発行条件をそれぞれ決める見通し。インドネシアは一部年限をサムライ債初のブルーボンドとする。
ブルームバーグのデータによると、同じ週に3件のサムライ債が起債するのは2019年1月以来となる。23年は現時点で7000億円を超える海外発行体の円建て債が起債している。週内の起債予定を踏まえると、5月19日までの起債額としては19年(約1兆7370億円)以来4年ぶりの高水準になる公算が大きい。
18日から19日にかけて起債する3銘柄はいずれも昨年も円建てで発行した定例発行体だ。みずほ証券プロダクツ本部執行理事の小出昌弘副本部長は、海外勢の円債は調達市場の分散を目的とした面が大きいとした上で、「海外に比べて絶対金利の水準が低く、4月以降の金利が安定しており円債の魅力も高まってきている」と指摘する。
日銀は植田和男総裁就任後初めて開いた4月の金融政策決定会合でイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)を軸とする緩和策の維持を決めた。日銀が早期のYCC再修正に踏み切るとの観測が後退し、長短の国債利回りが逆転する逆イールドは修正されてきた。
4月には米投資・保険会社 バークシャー・ハサウェイが6回目の円建て債を総額1644億円起債した。みずほ証の小出氏はこうした先行案件で投資家の需要回復が確認され、「日本のマーケットを選択する海外発行体が増えている」とも指摘。定例発行体に加え、「初めて円債を活用する発行体からの問い合わせも来ている」と言う。
代表的な債券指数の野村BPIによると、3月の米欧金融不安で再拡大した海外発行体の円建て債のスプレッド(上乗せ金利)も徐々に縮小に転じてきた。
マニュライフ・インベストメント・マネジメントの押田俊輔クレジット調査部長は、海外の利上げペースに頭打ち感が出ており、昨年までのようにスプレッドが拡大していくイメージは和らいできたと話す。一方、米銀の破綻などで「クレジットリスクには不安もある」とし、海外発行体の円建て債は「選別投資が必要だろう」と述べた。
(KKRの起債を受けて第2段落を書き換え記事を更新しました)
海外発行体の円建て債ラッシュ、日銀新体制下の金利安定が後押し - ブルームバーグ
Read More
No comments:
Post a Comment